スレッド:最近の学芸面令和7年12月10日
最近の学芸面令和7年12月10日 投稿者:波浪規定 投稿日:2025/12/11(Thu) 19:28:00 No.5413
『古今をちこち』(磯田道史)

『回顧2025 歴史 文化財』(文化部 多可政史)
投稿者:波浪規定 投稿日:2025/12/11(Thu) 19:48:00 No.5414
> 『古今をちこち』(磯田道史)
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『「熊と忍者」みつけた暁の訃報』

熊と忍者の関係を示す資料をみつけた。『鳥取藩史』第6巻に、それはあった。鳥取藩の歴史を旧藩士が編んだ資料集に近い本であるが奇跡の名著といっていい。こういう書物は殿様の人物伝に終始するが、鳥取藩の産物や産業の歴史まで筆をのばしている。
熊について鳥取藩に起きてがあった。領民が山で熊を獲った場合、熊肉は無条件で喰える。売ってもよい。しかし、熊の胆嚢と皮はいけない。胆嚢は熊胆といって薬になる。胆と皮は藩が公定した値で強制的に買い上げた。こういう藩は珍しくない。弘前藩では、熊一頭獲れば、1780年の規定では、銭500文貰えた。これは安すぎる。1819年に規定が改められ、銀40目(約十数万円)と米1俵(4斗)になった。肝と皮は藩が割増金を支払って買った。熊胆は胃腸薬として人気で価格が上昇し続けた。
鳥取藩も弘前藩と同じであった。元来、干した熊胆は1匁が銀10匁だった。ところが1780年頃には50匁にまで藩の買い上げ値段が上昇した(前掲・鳥取藩史、『弘前市史』藩政編)。
Re: 熊 投稿者:波浪規定 投稿日:2025/12/11(Thu) 20:04:00 No.5415
8代将軍の徳川吉宗はマニアだった。薬好きで自らも薬をこね、日本中で薬材を探させた。そのせいで、にわかに漢方薬ブームが生じた。次の田沼政権の時代はさながらバブル経済で都市で贅沢をする豪商が増え、熊胆の値が鰻登りに上がった。猟師のなかには、藩に隠れて熊を獲り、熊胆を売って儲ける「抜売」をする者も出た。
鳥取藩は考えた。忍の者を使って領民の熊猟を監視させることにした。1791年、農村向けの「在方御定」に、こうある。「以後、熊を取る時節には裏判手(藩の用度調達部局)から方々へ忍の者を出しおき、熊を取ったと聞いたら早速に進達するよう既に命じている。もし横道な者がいて、熊を取っても隠しおき、村方一統で抜け売り等したのを聞きつけ訴える者には褒美として抜け売った者から代銀を取り立て残らず(密告の)訴人に与える」(前掲・鳥取藩史)
Re^2: 熊 投稿者:波浪規定 投稿日:2025/12/11(Thu) 20:15:00 No.5416
江戸時代の忍者の仕事は、まことに平和である。僕は面白い忍者の史料をみつけると、真っ先に教える人がいる。嵐山光三郎さんだ。この人は忍びの話も好きだ。二人で『影の日本史にせまる—西行から芭蕉へ』という本も出した。「隠密」の視点からみた日本文学史だ。
ところが、みつけたその晩だった。嵐山さんの訃報が流れてきた。愕然とした。年末になると、雑誌『銀座百点』の句会があって、僕も嵐山さんや吉行和子さんとご一緒したこともある。今年はお二人とも逝ってしまった。嵐山さんと最後に話したのは電話だ。行きつけの神楽坂の中華料理店の電話番号がわからなくなったとおっしゃる。ネットで調べて教えて差し上げた。それだけだった。
Re^3: 熊 投稿者:波浪規定 投稿日:2025/12/11(Thu) 20:21:00 No.5417
嵐山さんは葬儀に行くよりその人の本を読むのがいいという考えだった。嵐山さんが最後にくれた本『爺の流儀』を本棚から出してきた。巷の老人指南書は上昇志向が多く、恰好いい第二の人生を送るすべを説く。嵐山さんは逆。老いの「下り坂は楽しい」「落ち目の快感は成り上がりの快感に勝る」と書く。
今月、僕は『豊臣兄弟 天下を獲った処世術』を出版する。嵐山さんに贈るつもりだったが、もういない。封筒に「御家族様」と書き加えるうち、涙で目がにじんできて何やらわからなくなった。
Re: 熊 投稿者:波浪規定 投稿日:2025/12/11(Thu) 20:22:00 No.5418
> 鳥取藩も弘前藩と同じであった。元来、干した熊胆は1匁が銀10匁だった。ところが1780年頃には50匁にまで藩の買い上げ値段が上昇した(前掲・鳥取藩史、『弘前市史』藩政編)。

伊予大洲藩は?尼崎藩は?大垣藩は?桃井家は?
回顧 投稿者:波浪規定 投稿日:2025/12/12(Fri) 18:40:00 No.5420
> 『回顧2025 歴史 文化財』(文化部 多可政史)

今年は「戦後80年」の節目にあたる。9月には世界史上初めてとなる原爆投下の惨禍を今に伝える「原爆ドーム」(広島市)が、特別史跡に指定された。
歴史的な文書類の保存を目的とするユネスコの「世界の記憶」(国際登録)には4月、「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典叢書」が登録された。都心にある増上寺(東京都港区)は戦時中、空襲に見舞われたが、徳川家康が寄進した貴重な仏教聖典群は別の場所に移され、被害を免れた。
「昭和百年」の節目でもある今年は、戦争以外の昭和に関する文化財の話題も目を引いた。1970年の大阪万博で岡本太郎が手掛けた「太陽の塔」が8月、重要文化財に指定。
戦後の日本では登呂遺跡(静岡市)などの重要な発見が復興を期す人々の活力となった。高度成長期の過剰開発で貴重な文化財が失われた反省から、文化財保護制度は次第に充実した。時代に合った制度の見直しは、今も続く課題だ。
文化審議会は10月、食文化など「生活文化」の分野に重要無形文化財の制度を導入するよう答申した。料理人や杜氏など卓越した技能を持つ職の担い手を重要無形文化財保持者(人間国宝)として認定できるようになる。ユネスコ無形文化遺産に「和食」「伝統的酒造り」が登録されるなど、日本の食文化は国際的に評価が高いが、保護強化の議論が本格化したのは近年のことだ。
Re: 回顧 投稿者:波浪規定 投稿日:2025/12/13(Sat) 16:23:00 No.5421
> > 『回顧2025 歴史 文化財』(文化部 多可政史)
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考古学のニュースでは、冠遺跡(広島県廿日市市)から出土した約4万2300年前の中期旧石器時代とされる石器とされる石器が注目された。
2000年に発覚した旧石器捏造事件では遺跡に石器を埋めるという前代未聞の不祥事により、「古さ」を追い求める旧石器研究のあり方に厳しい目が向けられた。捏造事件から四半世紀を経た今も、約4万年前より以前の中期旧石器の存在は研究者の間で賛否が分かれる。冠遺跡の石器は人類の日本列島到達に関する重要な知見を提示するだけに、年代測定などより詳細な分析が待たれる。
発掘調査以外でも以外な新発見があった。国内最大の前方後円墳・大山古墳(仁徳天皇陵古墳、堺市)の副葬品4点が旧三井物産社長の故・益田孝のコレクションから偶然見つかった。副葬品は明治時代の調査後にすべて埋め戻されたとされており、実物が確認されたのは初めてだ。金銅の鞘に入った小刀などは被葬者の権威の高さを示している。
世界遺産・沖ノ島(福岡県宗像市)で出土した古墳時代の鉄矛はX線CT撮影の結果、鳳凰など豪華な文様が確認された。科学的な文化財調査の進展は古代の政治・祭祀の新たな姿を映し出そうとしている。
Re^2: 回顧 投稿者:波浪規定 投稿日:2025/12/13(Sat) 16:31:00 No.5422
> > > 『回顧2025 歴史 文化財』(文化部 多可政史)
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昨年元日に発生した能登半島の発生からまもなく2年を迎える。被災地では国の専門機関「文化財防災センター」などが行う「文化財レスキュー」が進行中だ。
祭りや伝統行事が再開するなど明るい話題もある一方で、地域の文化の担い手を将来にわたって確保できるかという懸念はある。
我が国を代表する漆器「輪島塗」を巡り、若手人材の養成施設の整備に関する「基本構想」が8月にまとまった。2028年度以降に開設する施設は、後継者確保、魅力発信、市場開拓を担う方針だ。地震からの創造的復興を目指す輪島塗の官民連携の取り組みは、過疎・高齢化などに苦しむ各地の伝統工芸の再生のモデルケースとしても注目されそうだ。
Re^3: 回顧 投稿者:波浪規定 投稿日:2025/12/13(Sat) 16:40:00 No.5424
> > > > 『回顧2025 歴史 文化財』(文化部 多可政史)
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文化財保存の取り組みは日本以外でも続く。長年の取り組みが結実したのが11月にエジプトの首都カイロ近郊でオープンした「大エジプト博物館」だ。日本は財政支援だけでなく、収蔵品の調査や修復に多くの専門家が関わり、アドルファタハ・シシ大統領からも賛辞が贈られた。
貴重な成果の一方、トルコの遺跡で鉄生産の起源を追求し続けた大村幸弘さん、縄文時代研究の第一人者として、縄文文化の魅力を国内外に発信した小林達雄さんら、考古学をけん引した碩学の訃報も続いた。様々な節目を実感した今年は、保護の歩みと先人の功績を振り返りつつ、文化財が持つ普遍的な価値を見つめ直す一年となった。

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